長時間労働医師への面接指導について
長時間労働による医師への健康影響(「長時間労働医師への健康確保措置に関するマニュアル(改訂版)」参照)
職場のメンタルヘルス活動では、精神的不調への対応やその予防にとどまらず、個人や組織の活性化を視野に入れた対策を行うことが、広い意味での労働者の「こころの健康」を支援する上で重要です。医師の長時間労働の実態は様々な調査で明らかとなっていますが、医師に関しても、長時間労働によるウェル・ビーイングの低下や健康障害が懸念されます。医師のウェル・ビーイングを考える上では、ワーク・エンゲイジメントという概念が知られています。ワーク・エンゲイジメントとは、「仕事に誇りややりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)の3つがそろった状態であり、バーンアウト(燃え尽き)の対概念として位置づけられています。
※ 医師のバーンアウトは、ウェル・ビーイングの低下やうつ病等の健康障害のほか、休職、離職、自殺リスクの増加、ケアパフォーマンスの低下などがアウトカムとして挙げられます。一方、ワーク・エンゲイジメントは、医師個人の仕事の満足度やケアパフォーマンスに寄与するだけでなく、他医療関係職種にもポジティブな影響を及ぼすと考えられています。
また、労働時間の延長は睡眠時間の短縮につながることが知られています。睡眠の質的又は量的低下は心身の健康に影響を及ぼし、多くの生活習慣病(肥満、高血圧、耐糖能障害、循環器疾患、メタボリックシンドローム)の発症リスクが高くなると言われる一方で、適切な睡眠のマネジメントにより、こうした生活習慣病の発症を予防し、重症化を防止することが可能であると考えられています。
さらには、慢性の睡眠不足では、主観的な眠気と客観的な疲労・覚醒度低下が乖離することが知られています。慢性睡眠不足を強いられている長時間労働の医師においては、強い疲労度を感じながらも、医師としての強い使命感・責任感により勤務を継続しつつ、眠気を感じない、すなわち、主観的眠気を生理学的に認識しづらい状況に至り、過重労働を継続していることに注意が必要です。
長時間労働医師への面接指導の意義
面接指導は、長時間労働となる医師一人一人の健康状態を確認し、必要に応じて、管理者(事業者)が就業上の措置を講ずることを目的として行われます。
また、面接指導により以下のことが期待できます。
<面接指導対象医師>
● 自分の健康や働き方を見直す機会を得ることができる
● 健康管理、労働時間管理の助言を得ることができる
● 働き方を改善する方法について学ぶことができる
● 行動変容ができる
<医療機関の管理者(事業者)>
● 面接指導実施医師からの意見に基づき就業上の措置(配慮)を決定でき、安全配慮義務を履行できる